「なんでこの仕事を選んだんですか?」とよく聞かれます。
『痛みを取り除いて楽しい人生を過ごすお手伝いをしたかったからです♪』と言うようなものが模範解答な気がするのですが、実際はそうではありません(笑)
まぁ、本当にお話しするとながーーーーくなるので手短に。
数年前から派遣社員の扱いは良く良くニュースなどでも目にします。
私も資格を取る直前までは派遣社員をしていました。
一時期は正社員としても仕事をしていたのですが、ブラックな所も多く「お前なんかろくな学校も出ていないんだから言うことを聞いていればいいんだ」みたいなことを平気で言われるような所もあったり、3人だけの支部に在籍していた時は残りの二人が旬の話題の関係で、女子社員と仲のいい私に嫉妬して嫌がらせをしてきたりと本当に散々な目にあい社員恐怖症みたいな感じになってしまいました。
なので、プレッシャーの少ない派遣社員を選んだわけですが・・・
いくら成果を残しても契約期間が切れれば終わってしまいますし、仕事のできない社員の下に付くとそれはそれでとばっちりを受けたりと違う苦難が待ち受けていました。
世間で言われているような一通りの派遣差別みたいなものは大抵本当にあることで、派遣社員でも結局は値段が安いだけで何も変わらないどころか立場が弱いだけタチが悪いということにはすぐに気付きました。
しかし、まともな会社はほとんど派遣を雇っていて、「正社員登用あり」と甘い言葉で誘ったものの、正社員になった人なんて見たこともなかったりし、正社員の募集なんてそれこそほとんどありませんでした。
そんなこんなでリーマンショックと言うものが起き、私も例に漏れず契約満了することになりました。
さて、どうしよう・・・
30超えると派遣の仕事も激減します。
この先派遣で食べていくのは正直厳しい・・・
そんな折に家の近所に鍼灸の学校があるのを知りました。
鍼灸に関してはかなり興味があり、いつか資格を取るのであれば鍼灸の資格を取りたいと思っていたので説明を聞きに行ってみました。
資格というのはとにかくお金がかかるので初めは驚きましたが、ここはもうやるしかないと思い決死の思いで飛び込みました。
3年間、興味がある分野とはいえ興味がないことも勉強しなくてはいけないので本当に大変でした。
学校に行く間に気づいたことは、この資格を取っただけではとてもじゃないけど自分で治療院なんて開けないということでした。
昔は師弟制度みたいなものがあり、鍼灸免許を取った後はどこかで勉強をすることになったのですが、この不景気のご時勢で鍼灸院も雇用を生み出せず鍼灸師の雇用は接骨院が9割以上という現状でした。
私は自分で治療院を開くということを目標にしていたので、さらに決死の思いで進学することにしました。
教員養成科と言う鍼灸を教える資格を取る学校なのですが、どちらかというと鍼灸エキスパートコースみたいな位置付けの学校で、教えることよりも技術を習得することに力を入れていたように感じました。
その2年間で何とか自分でやっていける技術を習得しなければと思っていたので、必死に鍼灸院の仕事を探して学校に行きながら仕事をすることにしました。
学校が自宅から遠くなったので、7時に起きて23時に帰る、その間の自由時間は2時間くらいしかないが学校の課題で時間が潰れるという過酷な2年間だったように思います(笑)
そんなこんなで色々あり今こうやって治療院をさせていただいているのですが、たまに派遣問題なんかを見ると本当に心が痛くなります。
私もこうやって資格を取らなければ派遣問題真っ只中にいたと思いますし、資格を取るのにも数百万円のお金がかかるので決死のダイブをできない人がほとんどだと思います。
いつの間に日本人の働き方がこうなってしまったのかはわかりませんが、私はギリギリのところで負のスパイラルから脱出できたのではないかななんて思うことが度々あります。
こうやって自分で自分の職場を作るということは大変なことで、会社員とは違う苦難はありますが。。。
それでも自分の仕事は自分に返ってきてくれるのでやりがいを持って仕事を出来ているなという実感はあります。
ちなみに、どうして鍼灸師を選んだのかという部分については、冒頭のセリフが間違いではありません。
自分も痛みに苦しんだことがあるので、そういう苦しみを緩和したいという思いもあります。
もう一つは嘘をつかなくていいことです。
会社などに所属していると嘘をつかなくてはいけない場面がたくさんあります。
本当は他社の方がいい商品なのにもかかわらず、自分の会社のいいところだけを並べなくてはいけないこととか、しがらみを考えて本意ではないことを伝えなくてはいけないとか・・・
そういう事がない仕事だと言うことが実は一番大きいのかもしれません。
この治療院を立ち上げて思ったのは、会社でデメリットだったことはメリットになりうるということですね。
例えば、買ってきた花をデスクに飾ると「あの人は机に花を置いている、普通じゃないよね?」と言われることも、自分の店だと個性になります。
まぁ、そもそも普通じゃないの「普通」という言葉は、その人なりの主観なだけであって普通とは限らないのですがね。。。。
当院の雰囲気に関しても、ありがたいことに業者さんにも「会社に帰るの嫌になる雰囲気ですね」なんて言われたりもします。、お世辞半分なのはわかっているのですが(笑)
この雰囲気も全体像は誰に相談するわけでもなく、開院すると決めた瞬間にすでに頭の中にあったものなのです。
私自身が仕事をするために来たいと思える環境、ここにいるとリラックスできるからまた来たいと思える環境。
その中で、この家具がいいとか、これは雰囲気じゃないとか、直感で選んだ結果こんな雰囲気になりました。
多分、世の中には「会社」には向いていなくても何かに生かせるものを持っている人はたくさんいるんだと思います。
それがみなさんよく言う「普通」と言う名の人たちには合わないだけで、実際「普通」という人たちってそんなに多くないのではないかなと感じています。
ここはそんなちょっと風変わりな人間がやっている治療院なのだと思います(笑)
きちんと自分の主張を自信を持って言える仕事というのは楽しいものだなと思います。
今、派遣で仕事をしている人たちは辛い環境が多いと思います、でも、私みたいに何かしら活路を見出すことができればいいなと思っています。
しかし、その活路は一見険しい道のりです。
私も5年間の学生生活は今思い出してももう絶対に戻りたくありません。
それでも一歩を踏み出した時に何かしら見出せるのかもしれませんね。