鍼の金額というのは治療院さんによって本当に金額が違います。
また、マッサージなどと間違われやすいのですが、基本的に施術時間が長ければ長いほど効果が出るというものではない点にも注意した方がいいですね。
①鍼灸の保険適用について
よく「保険適用できるんですか?」と聞かれますが、鍼灸院は基本的に保険適用ができません。
接骨院などで鍼治療をする場合、鍼は別料金だったりしますが、10年くらい前までは「鍼の金額は取らないから、来院していない日の保険請求をしていいですか?」みたいな真っ黒なブラック交渉が行われていたために数百円の金額だと思っている方もいます。
鍼を保険適用にするためには医師の「同意書」が必要です。
これは、整形外科などの医師が、医院での治療では結果が出なかったので鍼で対応をお願いしますという意味合いの書類で、提携している鍼灸院でもない限りなかなか出してもらえません。
さらに、この保険診療は手続きが必要なため、対応している鍼灸院は滅多にありません。
理由としては保険診療代が安すぎる点にあります。
1部位で1500という価格設定が決まっているため、都内などの治療院で時間換算すると10-15分くらいの金額なんですね。
その間に着替えて鍼をするということがまず困難です。
これをできるのはベッドが5台以上ある治療院でスタッフを雇い、ベルトコンベアーの様に患者さんを対応しない限りは不可能です。
特にこのウイルス感染状況を考えると、患者さんごとに使い捨てのシーツを使用したり、当院の様に患者さん毎に寝具を全て変える必要があり、洗濯費用やシーツ代を考えてもまず無理です。
昨今は感染リスクもあり、一度に近距離で何人もがベッドに寝ている状況は患者さんも怖くてなかなか来院できないと思います。
地方などでしたら家賃も安いので、この保険適用の鍼をできるところがあるかもしれませんが、保険請求手続きの事務作業や人件費を考えると・・・・・
ちょっと厳しいと思いますね。
日本鍼灸師会の健康保険取扱手順
②鍼灸院の金額設定
それでは金額設定はどうやって決めているのでしょうか?
まずは家賃が大きいです、人は【高いものほど効果がある】と思ってしまいがちなのですが、例えば恵比寿や代官山などで治療院を開けば家賃は相当高いので、単価は上がります。
しかし、当院の様な住宅街で開けば家賃は安くなります、上北沢と銀座では同じ広さだった場合3-5倍くらい家賃が違うんですね。
例えば当院の家賃が15万円だったとすると、銀座だと45-60万円の家賃になるわけです。
単価の違いはダイレクトにここに響いてきます。
あとは、院内にベッドがどれだけあって人を何人雇っているかにもよりますが、回転効率の良い治療院でしたら多少安くはなりますが、それでも人件費があるのでそんなに変わりませんし、ベッドがひしめき合っているので安い割に居心地が悪かったりします。
治療院にホームページがあればそこをしっかり確認してみるのも良いと思います。
ポイントは下の二つ。
1、治療院の場所
2、治療院のスタイル(完全個室?複数個室?カーテンで仕切られているだけ?1人で営業?複数スタッフ?など)
まずはここによって結構価格は変わってきます。
そこからさらに、標準の施術内容の金額を見てみます。
当院の場合は30分、60分、90分がベースとなっており、個人経営なので120分などもカスタマイズできます。
基本的に10分1000円くらいがベースになっていると考えていただけるといいと思います。
そこに家賃代が高ければ時間単価が上がりますし、鍼の品質や価格、使用本数によってまた少し上がってきます。
また、先ほども書きましたがベッドが複数ありスタッフが数人いる場合は、患者さんの施術が終わったら片付けなどは他のスタッフがやってくれるので、1日あたりの顧客人数も増えるのですが、当院の様に全て一人でやっていて、完全入れ替え制で患者さんとのすれ違いがない様にすると、残業しても1日あたり7-8人対応するのが精一杯です。
そうなるとどうしても少し価格は上がってしまいます。
ポイントはいくるかあるのですが・・・まずは時間と価格を見る、一回4000円と書いてあっても、それが30分なのか60分なのかによって違います。
そして、それが場所などに釣り合っているのかを見ます。
例えば60分15000円で江戸川区の辺りにあるのであれば・・・よっぽど腕に自信があるのか、高く提示してプレミア感を煽っているのかによっても変わりますよね?
③施術内容の差
ここはなかなか見分けができないと思います。
鍼灸師の流派によっても違いますし、鍼の刺激や効果はやり方によって全然違うからです。
それは私たち鍼灸師がホームページなどを見てやっとわかるレベルの話で、一般の方は絶対にわかりません。
なので、抑えたいのはまず大まかに二つ。
1、施術内容は鍼だけなのか、マッサージも含まれているのか
2、鍼灸のスタイルは自分に合っているのか
1に関しては、鍼灸院は【鍼だけのところ】と【それ以外】で別れます。
基本的にマッサージが嫌いな鍼灸師がたくさんいます。
例えば、60分の施術内容だったとして鍼だけだったとすると、相当ボリュームのある鍼治療になります。
私がトレーニングでボロボロになった状態でやっと60分くらいです、しかしその中には「低周波パルス」と呼ばれる、鍼に低周波を当てて20分放置の様な置いておく時間が長い作業が入るからです。
鍼には流派がたくさんあり、私の様に一度の施術で50-70本くらいの鍼を使い低周波治療も行う場所と、1度の施術で5-10本ほどの鍼しか使わないやり方もあります。
そうすると、放置しておく手法がないので必然的に時間は少なくなります。
そういう施術で60分なのとは内容が大きく違うんですよね。
その間や鍼の後にマッサージをしてくれるところもあれば、私の場合はうつ伏せと仰向けの両方で鍼をするので、その間に軽くマッサージを入れたりするのですが、そういうのがなければ60分というのはちょっと時間が持たないと思います。
つまり、鍼だけなのか、それ以外にも対応があるのかによってボリュームがかなり変わります。
2のスタイルというのも続きの話になるのですが、例えば5-10本の鍼しか使わない治療院さんの場合、基本的に「筋肉に対する鍼」というよりも「体の中に流れる気の調整」と言うやり方が多いんです。
対して当院の場合は気というのも考慮しつつ、それよりも筋肉を緩めることを優先しているやり方をします。
なので、鍼の本数も多くなり、しっかりと筋肉に鍼を当てることで筋肉の緩みを出すのです。
これは個人的な見解なのですが、少ない本数の鍼の場合は冷え性やメンタル調整の様な内面の対応に優れている反面、腰痛や肩こりにはしっかりとした実感が得られない場合があります。
また、私の様なやり方の場合は冷え性やメンタル面に対して鍼自体の効果は得難いものの、腰痛や肩こりの改善実感は抜群に分かりやすいと思っています。
なので、自分が鍼を受けようと思ったときにどちらの悩みがあるのかによってスタイルを選ぶべきだなとは思っています。
よく「痛みの少ない鍼」とか「優しい鍼」と書いているところがありますが、それは刺激の弱い鍼を言い換えているだけです。
刺激が弱ければ鍼施術の後の実感も得難い場合が多く、刺激が多ければ「ガッツリやったー」と言う実感も得やすいです。
【刺激が弱い=痛くない】【刺激が強い=痛い】ではないと言うのがとても重要です。
基本的に痛さを感じるのは皮膚表面に鍼を刺す時だけなので、痛いと言うのは鍼灸師の技術不足というのがとても大きなウエイトを占めています。
そのほかには鍼を刺したときにズーンという響く感覚があるのですが、腰痛や肩こりの場合はその【響き】がしっかりある方が改善しやすいというのが経験として感じています。
響の正体は「深部痛覚」です、注射の様な痛みはほとんどが皮膚で感じるもので、筋肉の場合は響として感じます。
つまり、痛みの原因である部分にしっかり鍼が届いている証拠が【響き】だと思っていますし、自分自身で鍼をするときにも響きがしっかり出ないと改善することが少ないです。
この様に鍼灸院の価格というのは様々な要因で決まっています。
「駅前のマッサージは60分3000円なのに、どうしておたくは6800円もするの?」
そんなことをよく言われます。
答えは簡単で、業種が全然違うからです。
国家資格もなく知識もない人が付け焼き刃でやっている仕事と、国家資格をきちんと取得し、何年も病気のことやリスクについて勉強した人が同じ金額でできるはずがありません。
④当院のコンセプトと価格設定について
上記の様なことを踏まえて当院の事を書かせていただくと、まずは場所は住宅街ですが世田谷なのと路面店(階段がない)という事で少し家賃は上がります。
ベッドは1つのみで完全入れ替え制のために患者さんを重複させて対応することができません、その為に1日にご予約いただける人数も少なくなってしまっています。
鍼を多数使用し、安全で清潔な鍼を全て使い捨てで対応しているために他の治療院さんよりも鍼代がかなりかかっています。
マッサージも含んでいるので、鍼だけ挿して終わりと言うスタイルではありません。
こう言う理由から多分同じ事を都心でやれば60分10000円くらいの価格内容を住宅街なので6800円でできていると言う状況です。
お世話になっている銀座の治療院さんでは10000円+消費税で11000円くらいでマッサージがないくらいの価格設定です。
実際に、いらっしゃっている患者さんの多数の人から「この内容でこの価格は都内では安い方」だと言われています。
上北沢周辺にも鍼灸院さんがいくつかあって、価格設定も本当に様々です。
なので、金額だけでなく施術内容やスタイル、クオリティを確認しつつ通いやすい価格のところを選ぶといいいのではないかなと思います。