昨日は銀座でのお仕事だったのですが、その前に時間があったので久しぶりにアートを見に行きました。
森美術館でやっている【塩田千春展 魂がふるえる】という展示が興味があり行っていました。
6月からやっていたらしいのですが、10月で終わってしまうとのことなので善は急げと。
平日なのに結構人がたくさんいましたよ。
このアート展のキャッチコピーは「たましいってどこにあるの?」というもの。
この方自体が闘病生活を通じて感じたことや、そもそも生まれながらにして持っている疑問みたいなものをこれでもかと表現していました。
作品全体に【糸】が多用されているのですが、この糸というものが漠然としながらも見えないものを表現していることが多い感じがします。
【手の中に】
1番初めはこの作品から始まります。
掌の上の何か。
まるでこれからの展示を紐解く何かを示唆しているような作品でした。
ところどころにこういった千春さん本人の気持ちが書かれています。
【不確かな旅】
船をモチーフにしたオブジェからおびただしいほど吹き出て天に昇る糸。
糸・糸・糸。
こういう作品に解釈をつけるのは野暮というものなのですが、人生の旅の中で個々のつながりや魂というものが全てつながり天で溶け合うようなイメージを感じました。
糸の解釈は一つではない。
【再生と消滅】
体をつなぎとめている赤い糸と、侵食されているような細胞、そして空になったガラスに絡まる黒い糸。
空になった臓器から出たエネルギーは宇宙に戻るということでしょうか?
全体的に少し輪廻転成とか、人は死んだら天に戻ると言うメッセージが込められているように感じます。
確か、これが生きている状態を表したオブジェだった気がします。
個体というものはこうやって血やエネルギーというもので保っているというメッセージなのでしょうか。
これを見た後に次の作品をみると云わんとしていることがぼんやりと伝わってきますよね。
【外在化された身体】
実際の肉体と魂と言うことを訴えかけていると思います。
黒い糸につられた個体から抜け出した身体。
【小さな記憶をつなげて】
誰も座っていないピアノと椅子をつなぐ赤い糸、様々なものをつなぐ糸、ゆったりとつながっていたり緊張を表すかのようなテンションだったり・・・
見るものに様々なものを訴えかけてきます。
【赤と黒】
人の体と宇宙。
それは融合していますよというメッセージなのでしょうか。
【静けさの中に】
こう前置きが書かれた展示物。
よく、廃墟が好きという人がいる。
焼け落ちたピアノだからこそ香り立つ存在感、もう誰も座らない椅子。
だからこそそこにあった存在として様々な想像力を掻き立てるのではないでしょうか?
廃墟を見ると、そこに以前存在していた様々な風景を想像できます。
今現在人の気配がする場所は、事実しかない。
事実っていう一つの現実。
でも、このピアノ、廃墟からはそこまでの歴史や道のりが見え隠れし、現実よりも美しく頭の中に再現されるんじゃないでしょうか?
【時空の反射】
この作品は実物を見ないと不思議さが伝わってきません。
宙に浮くドレス、そして正面に移る自分の姿・・・
あれ?
この箱どうなってるの?って。
【内と外】
ベルリンで集めた窓を組み合わせて作られたもの。
人の第一の皮膚は生まれたままの皮膚。
第二の皮膚はそれを包むドレス。
そして第三の皮膚はその周りにある壁なのではないか。
塩田さんはそう言っています。
そういわれてからこの二つを見るといわんとしていることが少しわかるような気がします。
内と外。
単純な位置の話ではなく、実は別の意味があるんですよね。
【集積−目的地を求めて】
ズドンと来ました。
どこかに旅行に行く時、空港に行く時、そのスーツケースを見ると同じ感情がいつもありました。
人ではなくスーツケースなんですよね。
この人は朝起きてからどんな気持ちでここに来たのでしょうか?
これから旅に出るのでしょうか?それとも家に帰るのでしょうか?
家に帰るのであれば楽しかった思い出とほろ苦い寂しさがケースには詰まっています。
これから出発する人のケースはまだからっぽ。
スーツケースが並んでいるベルトコンベアを見るとそう言う感情が入り混じりませんか?(笑)
スーツケースを釣っている赤い糸はどのようなつながりでスーツケースを運ぶんでしょうか?
動画で見るとわかるのですが、スーツケースはまるで生きているようにゴトゴトと動きます。
この作品でこの展示会は幕を閉じます。
私なりの解釈を書いていますが、こう言うアートの解釈に正解はないと思います。
塩田さんがこれらをどう言う思いで作ったかと言う答えはきっと彼女自身の中にあるのでしょうが、それはそれ。
実はエントランスにこんな作品があります。
【どこへ向かって】
この白い糸で満たされた船は、このエスカレーターを降りてくるときにはどんな色になっているのでしょうかね?
そんなことを考えながらエスカレーターを上り、降りてきました。